三國正樹 『読書記録』

今までに読んだ本の記録です。

失われた志 対談集

著者:城山三郎      発行所:文藝春秋

読書年: 2013年

印象に残った言葉: そうそう、僕なんか自分の作品だけども、やはり日本のノンフィクション文学の一里塚になったと思うんだけれど、まぁ文壇からは、何の反応もないですね。だからそういう意味じゃ冷たいといえば冷たいね。だからさっきも言ったように、僕は読者に支えられてると思う。

・・・『鼠』について語っている部分です。私が最初に読んだ城山三郎の本が『鼠』でした。これは非常に面白い内容だったことを今でも覚えています。TVドラマにもなりましたね。

・・・無視するのではなく、悪いなら悪いでそれを取り上げて文壇の肥やしにしてくれれば、という言葉もありましたが、こういうことってどの業界でもありそうです。無視する、というある種のいじめと言えるでしょう。

・・・その時代の「空気」や流行、価値観の違いは変化するものなのでしょうが、本質に基づかない批判にさらされることもある。たとえば私はピアノ演奏を少年時代から続けてきましたが、高校生まで「体を動かさないで演奏するのはおかしい」と言われ続けていました。しかし、よく考えてほしい、ホロヴィッツルービンシュタイン、あるいはミケランジェリが身体を動かしながら演奏しているのかどうか。巨匠ならよくて、学習者なら批判されるというのは変です。現在でも演奏スタイルは同じですが、そのことについて批判を受けることはなくなりました。そして現代では身体を揺らして演奏する人はかなり少なくなったように思います。

・・・今後もノンフィクション関係の本は月に1冊ペースで読んで行こうと思っています。

森達也 青木理 の 反メディア論

著者: 森達也青木理      発行所:現代書館

読書年月:2017年9月

印象に残った言葉: 放送禁止歌は要するに“標識”です。日本のメディアは世界でもトップクラスの自由な環境を保証されているのに、自由な空間が怖くなってしまう。だから「ここから外は危険です」とか「これ以上は立ち入り禁止」などの標識が欲しくなる。エーリッヒ・フロム的な「自由からの逃走」ですね。

・・・『自由からの逃走』は10年ほど前に読みました。ある人から勧められて読んだ本ですが、第2次大戦中に書かれた本で、ナチズムの研究という内容でした。

・・・たしかに集団生活は人間にとって大事なことなのですが、自由に生きることのできる時間を放棄してまで全体に尽くすことにはいつも疑問を感じています。そして現代でも全体主義的な考え方はあると思います。戦争が起きたらどうなんだ、と言われそうですが、たとえ戦争でも、誰かの間違った考えに従うことで最終的に国のためにならないことをしてしまうということはあるでしょう。その時にどう行動するか? 難しい問題かもしれませんね。

・・・「Liberty=自由」と訳すことに疑問を持っていた明治時代の漢学者・藤沢南岳の話も思い出します。もし「道理」と訳すようになっていたら日本の文化は全然違った価値観のものになったと思います。所詮人間に自由などはあるはずもない、とも考えられます。しかし、だからこそ、「Liberty」の有難さを分からないと、生きていてもつまらないのではないでしょうか。

http://www.rikuryo.or.jp/magazine/no30/01.html

日本中枢の狂謀

著者:古賀茂明      発行所:講談社

読書年月:2017年8月

印象に残った言葉: しかし、官僚たちの頭の中では嘘をついたことにはなっていない。「汚染水が完全にブロックされている」といったら、それは嘘なのだが、安倍総理はそうはいっていない。「汚染水の『影響』は完全にブロック」といっている。そして「影響」という言葉の定義は行っていない。

・・・原発事故の汚染水については、現在になっていろいろと当時のことが分かり始めているようです。恐ろしいことだと思います。

・・・そして、「原発マフィア」についての記述も興味深く読みました。

・・・暑い日になると某放送局が「L字テロップ」を流すのが苦手です。あの動く文字を見ていると乗り物酔いをしたような感覚になるためですが、それとともに「エアコンを適切に使って」と何度もアナウンサーが繰り返すのが気になります。私の学生時代は部屋に団扇と扇風機しかありませんでした。しかし熱中症で死んだ等というニュースはほとんど聞かなかったような気もします。これはひょっとすると国民全体に電気を使うように仕向けて原発を認めさせようという陰謀かも(?)

・・・記者クラブについての記述もありましたが、同感です。どのメディアも同じようなことしか書いていない新聞。最近、いろいろなサイトをみていて、本質を報道しているジャーナリストもいることを知りました。今後、注目したいサイトもたくさんあります。

日航123便 墜落の新事実

著者:青山透子      発行所:株式会社河出書房新社

読書年月:2017年9月

印象に残った言葉: 公務員は誰のためにいるのか、政治は何を目的として行うのか、会社経営はどうあるべきなのか‥‥‥。/自分の置かれた立場の都合で、嘘を語ることは当たり前だ、と勘違いしていないだろうか。嘘は、嘘をつかれた相手を一生傷つけ続けるものだ。そして嘘をついた側にも一生、胸にしこりが残るものである。それを解決する方法は、嘘をついた人による心からの謝罪以外にない。

・・・昨今の政治的な様々な事件に対する官僚の答弁を思い出します。まあ、「嘘も方便」という言葉もありますし、全部正直なだけで良いとは言えないかもしれません。しかし事態が人命にかかわるとなるとそうはいかないでしょう。

・・・1985年の日航機墜落事故の時、私は東京のアパートの一室でテレビを見ていてこの事故を知りました。でもまさかこれは「事件」だったとは!

・・・さまざまな目撃証言から真実に迫る著者の姿勢は、大変立派だと思います。最近に珍しく、1日で読み終わった本でした。

 

音楽の基礎

著者:芥川也寸志      発行所:岩波書店

読書年: 1971年

印象に残った言葉: ヨーロッパの音楽は、オクターヴ(八度)という最大の音程から、短二度という最小の音程に向って、何世紀もの時間を費やして、縮小への道を歩みつづけたのである。平均率にあっては、短二度よりせまい音程は完全一度のみである。しかしそれは原始に通じる。音楽はどこへ行ったらいいのであろう?

・・・中学校時代に先輩に勧められた本です。その頃は半分も理解していなかったと思い、再度読んでみたらこれがなかなか面白い内容なので驚きました。一般の人が読むには専門用語が多すぎるのかもしれませんが、普通の「楽典」関係の本よりは読み物として面白く構成されていると思います。

・・・実は「フリギア終止」についてよく分かっていなかったので、これを機会に学び直しました。教会旋法については、ギリシャ時代の旋法と9~10世紀ころの旋法では名前が同じでも内容は異なるということ、「ドリアの4度」がフォーレの作品で用いられていること、ブラームス交響曲第4番第2楽章テーマが「フリギア旋法」に基づいていること、「リディア旋法」をショパンマズルカでしばしば用いたこと、くらいしか高校時代までは知らなかったことがありまして、それからいろいろと勉強を積んできたつもりですが、「フリギア終止」に関しての「下向導音」という概念について今回初めて知りました。まったくお恥ずかしい限りです。

・・・フリギア旋法は、調体系が確立したあとも独自の存在を主張していた、と事典にはあります。なるほど。例えばバッハ「ブランデンブルク協奏曲第3番」の第2楽章の終止をみると、今までそういうものだと思って聞いていた和声が実は相当な意味を持っていたことが分かり、勉強は本当に楽しいものだと思いようになりました。

安倍三代

著者:青木理      発行所:朝日新聞出版

読書年月:2017年8月

印象に残った言葉: いま世界各地で起きているように、既得権益層による政治の独占と劣化は、極めて不健全な形でのバックラッシュをおびき寄せかねない。これに寛も警鐘を鳴らした「富の偏在」がセットになれば危険性はさらに増す。

・・・ノンフィクション関係の著作を読むのが昔から好きで、時々新しい本を買って読みます。この本は街の本屋さんで見かけて購入したものです。現在の自民党政権について、非常に参考になる内容でした。

・・・「既得権益層」については日頃考えることもあり、世襲政治家についてはたしかに問題もあるだろうと学ぶことができました(よい政治を行ってもらえれば文句はないのですが)。

・・・「ノンフィクションの華は『事件』と『人物評伝』」という言葉も印象的でした。その人物の生き方が見えてくるような評伝には興味があります。

これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング

著者:永井孝尚      発行所:SBクリエイティブ株式会社

読書年月:2017年8月

印象に残った言葉: 高い買い物をした後、広告が気になるのには、実は理由がある。「本当に買ってよかったのか?」高い買い物をした人ほど、内心、そんな不安を抱えているのだ。

・・・マーケティング理論について知ることができた一冊です。私の仕事とは直接関係がありませんが、世の中がどう動いているのかを知るのは楽しいことです。たしかに「売った後のフォローがとても大切」とありましたがその通りだと思います。

・・・ピアノも全く同様で、いくら素晴らしい楽器を新品で買っても、その後の調律でひどい楽器になったりすることがあります。何度か経験しました。調律師との出会いは大切だと思います。現在の夢は、定年後に調律を学んで自分で楽器を管理できるようになることです(音合わせと簡単な調整は現在でも自分で行っています)。

・・・ところでそのピアノ調律師関係の漫画があり、一時読んでいましたが、巻が進むとけっこうグロテスクだったり残酷だったりする描写があり、以前読んでいたものも含めて全部処分してしまいました。音楽芸術にはやはりそういう描写は似つかわしくないものだと思います。別にきれいであでばそれで良いとも思いませんが、私の仕事柄絶対に見たくない描写がそこにはあったので。こういうことも世の中にはあります。