三國正樹 『読書記録』

今までに読んだ本の記録です。

街場の五輪論

著者:内田樹小田嶋隆平川克美    発行所:朝日新聞出版

読書年月:2017年7月

印象に残った言葉: そういう「ほとんど人が住んでいない」場所を作り出して、最大限にそれを活用しようというプランはもう官邸内部ではできてると思うよ。

・・・「汚染水による影響は完全にブロックされている」という首相の発言について書かれていました。ブロックされているとは当時から思っていませんでしたが、本日(2017年7月22日)のニュースで「燃料デブリ」のことが報道されています。東電会長による「汚染処理水を海へ放出」の発言を見ても、原発事故の問題が決して安心できるものなどではないということが分かります。

www.tokyo-np.co.jp

・・・本来、みんなでやることは正しいことだ、という思想が好きではない私でした。何か疑問があれば発言してしまう癖があり、そのせいか団体行動に馴染めない部分が若干あります。でも、この本を読んで、そういう人間が世の中にいてもいいのかなと思ったりいたしました。

・・・オリンピックのニュースは東京都知事関係でも報道されていますが、終わった後のことも考えていろいろな政策を行って頂ければなあと思っているところです。

・・・それにしても私の住んでいる市では市街地の空洞化がひどい。シャッター街が増え、にぎやかなのは周辺地域にある大規模店舗、スーパーなどになってしまいました。自家用車でないと買い物にも困るような状況です。昔ながらの商店街で、人々の会話が楽しかった時代はもうこないのでしょうか? オリンピックが終わったあと、結局喜んだのはゼネコンだけだった、庶民の暮らしは以前より悪くなった、ということにならないよう祈ります。

どアホノミクスの断末魔

著者:浜矩子      発行:株式会社KADOKAWA

読書年月:2017年7月

印象に残った言葉:戦後レジームから脱却して世界の真ん中で輝く。そのための改憲を実現する。これらのことを経営ビジョンとする大日本帝国会社。このビジョンを実現するための経営方針として、統合政府部門による意図的無責任財政の実現を目指す大日本帝国会社。

・・・タイトルがものすごかったので思わず買ってみた一冊。浜さんはTVでよく見る人で、「働き方改革は労働者の奴隷化」ということが書いてあったので興味深く読みました。

・・・経済成長はEUも日本も今後期待できないのではないか、という論説をこの前ある本で読んだばかりです。たしかにいろいろなことに希望が持てなくなっているような気がします。ただ、個人的には現在の生活には満足できているので、今後は健康に気をつけて無理のない仕事をすることが大事だと考えています。

属国民主主義論 この支配からいつ卒業できるのか

著者:内田樹白井聡      発行所:東洋経済新報社

読書年月:2017年7月

印象に残った言葉:市民的社会の指標は「器量が大きい」とか「胆力がある」とか「気が練れている」といった文学的な表現で語られるわけですから、数値化できない。でも、今の人はそういう「なんだかよくわからない指標」で人間を語ることがすごく厭みたいですね。客観性の高い査定を受けて、その結果を数値で示してもらいたいらしい。

・・・格付けは「同じこと」をやっている人間の頭数が多ければ多いほど精度が上がる、という記述があり、なるほどと思いました。多くの人が同じような領域に殺到するという現実。これでは独創的な研究は現れなくなるかも。

・・・いつでしたか、カラオケを数値で評価する番組を見たことがありましたが、あまり面白いとは思いませんでした。何と言いますか、人間らしい表現というようには聞こえず、テクニックを競っているだけのように聞こえたもので。

・・・今朝、久しぶりでFM放送を聴いていて思ったのですが、クラシック音楽の演奏で仕事することの価値が30年くらい前とはずいぶん変わったのではないかということ。「査定」を受ける場であるコンクールの数は多くなり、みんな何らかの賞を獲得しているイメージがありますが、その演奏が同じような感じのものになってはいないだろうか、と思います。以前は個性派の演奏家がたくさんいました。そしてそれをみんな楽しんでいたように思うのですが、現代ではコンクールが基本となっているかのようで(あるいは芸能人的なデビューなど)、本当に音楽を愛して演奏している人が少ないように思います。むしろアマチュアの方にそういう方向の奏者がいるのかも、と思ったりします。

 

属国民主主義論 この支配からいつ卒業できるのか

著者:内田樹白井聡       発行所:東洋経済出版社

読書年月: 2017年7月

印象に残った言葉:話が巧妙にすり替えられているのがわかります。ポツダム宣言によれば、日本に「交戦力」が残存する限り米軍の存在は正当化される。五一年の旧安保条約によれば、日本に「固有の自衛権を行使する有効な手段(the effective means to inherent right of self-defence)が整わない限り、米軍の占領は正当化される。つまり、日本に戦力があれば(それを破壊するために)米軍は駐留するし、なければ(それを補完するために)やはり米軍は駐留する、と。それどころか、それは日本が「希望」してそうなったのだ、と。

・・・この点をよく分からないまま今まで自衛隊のことを理解していたように思います。米軍基地問題は最近ニュースでも取り上げられていますが、「米軍が兵員を派遣して巨大な基地を維持しているのは、実は日本を守るためでも、世界の秩序を守るためでもない」という記述を読んで、ようやく戦後の日本がどのような歩みを続けてきたのかが見えたような気がしました。

・・・音楽家はあまり政治に口出しすべきでないと考えていますが、歴史を学ぶことは重要だと思っています。この本では大学についても書かれているようなので、さらに読み進めて、次回もこの本について書こうと思っています。

警察庁長官を撃った男

著者:鹿島圭介      発行所:新潮社

読書年:2014年

印象に残った言葉:事件を時効にしようとする、当局の方針をうすうす感づいていた中村。しかし、その表情はむしろ、さばさばとしたものだった。

・・・東京で2台ピアノ演奏会を開催した時に知人から頂いた本です。演奏会のお祝い品として本を頂くのは珍しいことですが、是非読んでほしい、ということでしたのでそのあとすぐに読み始め、内容の深さに感心した一冊でした。

・・・昔からノンフィクションやジャーナリズム関係の本には興味があり、城山三郎氏の著作などを読んできました。作者の取材とそれをどうまとめるのかという手法に個性が出るのが面白いと思っています。

・・・この本に基づいた内容が先日のTV「奇跡体験アンビリーバボー」で放映され、興味深く見ました。

作曲家◎人と作品 ドヴォルジャーク

著者:内藤久子      発行所:音楽之友社

読書年:2014年

印象に残った言葉:ドヴォルジャークはきわめて率直で自然を大いに楽しむ方です。スピルヴィルを訪問している間も、小さな森(果樹園)を通り、川の土手に沿って歩く朝の散歩を日課とし、鳥のさえずりを何よりも楽しんでいる様子でした。実際に散歩に出かけた初日に、赤い羽を付けた、ただ翼だけが黒ずんでいる妙な鳥に興味を引かれたようでしたが、そのような鳥のさえずりは、弦楽四重奏曲第3楽章のテーマを大いに鼓舞するものとなったのです。

・・・コヴァジークの言葉より。弦楽四重奏曲「アメリカ」は名作だと思います。

・・・ドボルジャーク(「ドヴォジャーク」と表記されることが多くなってきたようですが)の作品で大好きなのは「ピアノ協奏曲」「ヴァイオリン協奏曲」「チェロ協奏曲」「弦楽四重奏曲(Op.16、Op.96)」「ピアノ四重奏曲第2番」などです。もちろん交響曲新世界より」も良い作品だと思いますが、もう何度も聴いてしまったので最近は遠ざかっています。

・・・何度も何度も聴く(聴かされる)といくら名曲でも聴きたくない、ということはあると思う。例えばベートーヴェン交響曲第9番」。あの歓喜の主題ばかり切り取ってTVで流しすぎ。ビゼーの「カルメン前奏曲もです。安易に使用しすぎです。音楽作品に対して、もう少し敬意を払ってほしいと思うこの頃です。

・・・それならTVを見なければいいのではないか。たしかにその通り。そのうちテレヴィジョンは処分してしまうかもしれません。ただ、DVDで映画を見たいということはあるのでもう少し様子を見るとしますか。

 

賊軍の昭和史

著者:半藤一利   保坂正康      発行所:東洋経済新報社

読書年:2015年

印象に残った言葉: 靖国神社の起こりは、戊辰戦争の官軍側の戦死者を慰霊する招魂社で、聴衆の大村益次郎がつくったんですね。だから、西南戦争の西郷軍も靖国神社には入れませんでした。西郷軍も賊軍だったからですよね。/ ところが、幕末の禁門の変で死んだ長州藩の兵は入っているんですよ。

・・・清河八郎靖国神社に入っていて、佐久間象山は入っていない、など興味深い事実が述べられています。人物の功績ではなく、幕府方は賊軍、薩長方は官軍という理屈で祀られるかどうかが決まるということには疑問を感じました。いくら「賊軍」とは言え天皇に反逆したわけではないのに、という記述も印象的でした。

・・・以下のようなニュースを読んだことがありますが、興味深い話です。ただ、当分こういう問題は解決されないような気もします。

www.sankei.com

・・・以前、会津若松市まで仕事で行ったことがありますが、戊辰戦争以来、会津の人たちがどういう思いで生きてきたかを市民の方々より聞き、感慨深いものがありました。その時以来、戊辰戦争関係の本は時々読み、「鯨波戦争」という私の生まれ故郷での出来事についても知りました。会津へは、いつかもう一度行ってみたいと思っています。