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三國正樹の『読書記録』

今までに読んだ本の記録です。

イギリス音楽の復興

著者:マイケル・トレンド(木邨和彦訳)      発行所:欧史社

読書年:2004年

印象に残った言葉:もう一つの注目すべき特色は、アイアランドが地理への強烈な感覚を持っていたことである。アイアランドはアーサー・マッケンの神秘主義の著作にひかれ、著者が買右折する口寄せ、魔法、古代の儀式の不思議な力に興味を抱いた。特にチャネル諸島に魅せられ、この島嶼を何回も訪れる。

・・・ジョン・アイアランドの作品を知ったのは、池袋の西武デパート「WAVE」という店でピアノ協奏曲のCDを購入してからです。このCDには他にブリッジ、ウォルトンの作品も録音されており、これがきっかけでイギリス音楽への興味が湧いてきました。次にパーキン演奏のアイアランドのピアノ作品全集を購入、「装飾」「ロンドン小品集」「サルニア」などの名作に魅せられましたが、「サルニア(本書では“サーニア港”)」第1曲の「Le Catioroc」の意味がどうしても分からず、いろいろな人に聴いたことを思い出します。知人A氏に「ブリティッシュ・カウンシル」に行くよう勧められ、途中の神保町を歩いていた時に「富士レコード社」でダニエル・アドニの演奏する1枚(写真)を見つけました。その解説を読んだところやっとこの曲について分かったのです。ずいぶん昔の思い出でした。

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豊かなイギリス人

著者:黒岩徹      発行所:中央公論社

読書年:1995年

印象に残った言葉:イギリスの学校を回っているうちに、日本にはない教授法を見つけた。「プロジェクト」と呼ばれる教授法である。一つの題目を生徒が自分自身で選び、それについて数週間あるいは一学期間かけて調べ、書き上げるのである。大学の卒業論文と思えばいいかもしれない。それを小学校一年生からやるのである。

・・・20年くらい前、イギリスの作曲家についていろいろ調べ、演奏していた時期がありました。日本の音楽業界はドイツ音楽を志向しがちですが、国民楽派など、いろいろな国の音楽をもっと知る必要があると思っています。英国の作曲家ではエルガー、ブリッジ、アイアランド、ブリテンホルストヴォーン・ウィリアムズなどが有名ですがその他にもシリル・スコット、アーサー・ブリス、ウィリアム・ウォルトン、チャールズ・ヒューバート・パリー、ジョン・ラターなど重要な作曲家がたくさんいます。残念ながら英国は行ったことのない土地ですが、こういう本を読んで少しでもその文化を知ることができたらと思っています。

「社会調査」のウソ

著者:谷岡一郎      発行所:文藝春秋

読書年:2000年

印象に残った言葉: 社会科学における統計的な有意さは、通常、九五パーセントに設定されている。つまり偶然は五パーセント以下ということになるわけだが、ということは、二十回に一回程度は偶然があってもおかしくないということである。

・・・この一年間、ある仕事の関係で統計学を勉強しなおしています。それとは直接関係のない本ですが、社会調査の過半数はゴミである、といういささか過激な内容を読み直してみました。最初に読んだのはかなり昔のことですが、たとえば「forced choice(強制的選択・特定の選択肢が上位にくるような質問の作り方)」や「carryover effect(キャリーオーバー効果・後半の質問に向けてわざといくつかの問題点を設けて先入観を持たせる方法)」などを知りました。

この本で「リサーチ・リテラシー」について学ぶことができて良かったと思っています。

 

人生後半のための知的紳士学

著者:板坂元      発行所:PHP研究所

読書年:1997年

印象に残った言葉:普通、パーティーを催すときは、出席者の一人頭三杯分を用意する。飲まない人もいるが、五杯六杯と飲む人もいる。けれども三杯で足りるのだ。酒の強いアメリカ人には不足がちかもしれないが、振舞酒に酔うのは、社会人として失格なので、微醺くらいで抑えるわけだ。(中略)そして、それを楽しみながら、上品な話でひとときを過ごす。

・・・飲めない人に酒を強要する文化は、さすがに現代では下火になってきたように思いますが、基本的に日本の「宴会」文化が苦手です。特に、自分の席を離れてビールを注ぎに回る人が現れる時間。食べ物をほとんど残して会話に興じるのはどうも、といつも思うのですが、これだから友達が少ないんだ、と言われても仕方ありません。でも、高い会費を払って、料理を残しながらお開きになる会というのは避けたい(怒られるかな)。それに「二次会」という、時間に際限のない会は絶対に出ないことにしています。自宅で飲む以外は、基本的には宴会は2時間が限度ではないでしょうか。

ご臨終メディア

著者:森達也森巣博      発行所:集英社

読書年: 2007年

印象に残った言葉:誰もが実は「洗脳」されているということが、ちっともわかっていない。教育というのは「洗脳」です。メディアも本質は洗脳なのに。

・・・その他、「ある前提からいきなり議論が始まることが多い。たとえば「国益に鑑みて云々」とか。国益って何?という突き詰めが抜け落ちている」という視点や、パチンコ業界のからくりなど、報道されていない事実をたくさん知ることができました。この本で述べられている通り、ジャーナリズムは「大本営発表」と化しているような感じもします。

 

生活の芸術 ――新しい芸術心理学の立場

著者:桜林仁      発行所:誠信書房

読書年:1977年

印象に残った言葉:私はむしろ、神経の場は、同じ反応体制を持続することができないという原理から出発した、私のいわゆる「飽和力学(satiation dynamics)」の構想を発展させるのが、いままでの形態理論を包越して、自然な発展をとげさせる、適切なハイウェイだと思うのである。

・・・大学1年の頃の「心理学」の教科書でした。この本を読んで、「人間がバランスという静止的解決を求めながらも、これを破って、あえてアンバランスの流動的未解決を求める行動を起こす逆行的現象」についてよく分かったように思います。

話は変わりますが、高校1年の頃、倫理・社会の先生が「君たち音にもっと敏感になろうよ」と言っていたことを思い出します。音楽の仕事を目指している立場なのに鞄に鈴をつけているとは何だ、ということの話だったと記憶しておりますが、まったくその通りだと思います。音楽家は音に対して敏感であるべき。そのためには本書で述べられているような「飽和ダイナミックス」について詳しく知ることも必要だと考えます。

音楽演奏の社会史

著者:大崎滋生      発行所:東京書籍

読書年:1995年

印象に残った言葉: そして音楽に何を聴くのかといえば、その音楽作品自体の美だけではなく、その音楽の理解と認識の前提となる、時代とか他の文化現象といった全体とのつながりを聴くのである。

・・・仕事がら、音楽学関係の本をよく読みます。この本では「演奏慣習」について書かれており、「なぜ即興が無くなったのか」「ヨーロッパ音楽におけるテンポ表示の歴史」などについての興味深い考察が述べられています。