三國正樹 『読書記録』

今までに読んだ本の記録です。

警察庁長官を撃った男

著者:鹿島圭介      発行所:新潮社

読書年:2014年

印象に残った言葉:事件を時効にしようとする、当局の方針をうすうす感づいていた中村。しかし、その表情はむしろ、さばさばとしたものだった。

・・・東京で2台ピアノ演奏会を開催した時に知人から頂いた本です。演奏会のお祝い品として本を頂くのは珍しいことですが、是非読んでほしい、ということでしたのでそのあとすぐに読み始め、内容の深さに感心した一冊でした。

・・・昔からノンフィクションやジャーナリズム関係の本には興味があり、城山三郎氏の著作などを読んできました。作者の取材とそれをどうまとめるのかという手法に個性が出るのが面白いと思っています。

・・・この本に基づいた内容が先日のTV「奇跡体験アンビリーバボー」で放映され、興味深く見ました。

作曲家◎人と作品 ドヴォルジャーク

著者:内藤久子      発行所:音楽之友社

読書年:2014年

印象に残った言葉:ドヴォルジャークはきわめて率直で自然を大いに楽しむ方です。スピルヴィルを訪問している間も、小さな森(果樹園)を通り、川の土手に沿って歩く朝の散歩を日課とし、鳥のさえずりを何よりも楽しんでいる様子でした。実際に散歩に出かけた初日に、赤い羽を付けた、ただ翼だけが黒ずんでいる妙な鳥に興味を引かれたようでしたが、そのような鳥のさえずりは、弦楽四重奏曲第3楽章のテーマを大いに鼓舞するものとなったのです。

・・・コヴァジークの言葉より。弦楽四重奏曲「アメリカ」は名作だと思います。

・・・ドボルジャーク(「ドヴォジャーク」と表記されることが多くなってきたようですが)の作品で大好きなのは「ピアノ協奏曲」「ヴァイオリン協奏曲」「チェロ協奏曲」「弦楽四重奏曲(Op.16、Op.96)」「ピアノ四重奏曲第2番」などです。もちろん交響曲新世界より」も良い作品だと思いますが、もう何度も聴いてしまったので最近は遠ざかっています。

・・・何度も何度も聴く(聴かされる)といくら名曲でも聴きたくない、ということはあると思う。例えばベートーヴェン交響曲第9番」。あの歓喜の主題ばかり切り取ってTVで流しすぎ。ビゼーの「カルメン前奏曲もです。安易に使用しすぎです。音楽作品に対して、もう少し敬意を払ってほしいと思うこの頃です。

・・・それならTVを見なければいいのではないか。たしかにその通り。そのうちテレヴィジョンは処分してしまうかもしれません。ただ、DVDで映画を見たいということはあるのでもう少し様子を見るとしますか。

 

賊軍の昭和史

著者:半藤一利   保坂正康      発行所:東洋経済新報社

読書年:2015年

印象に残った言葉: 靖国神社の起こりは、戊辰戦争の官軍側の戦死者を慰霊する招魂社で、聴衆の大村益次郎がつくったんですね。だから、西南戦争の西郷軍も靖国神社には入れませんでした。西郷軍も賊軍だったからですよね。/ ところが、幕末の禁門の変で死んだ長州藩の兵は入っているんですよ。

・・・清河八郎靖国神社に入っていて、佐久間象山は入っていない、など興味深い事実が述べられています。人物の功績ではなく、幕府方は賊軍、薩長方は官軍という理屈で祀られるかどうかが決まるということには疑問を感じました。いくら「賊軍」とは言え天皇に反逆したわけではないのに、という記述も印象的でした。

・・・以下のようなニュースを読んだことがありますが、興味深い話です。ただ、当分こういう問題は解決されないような気もします。

www.sankei.com

・・・以前、会津若松市まで仕事で行ったことがありますが、戊辰戦争以来、会津の人たちがどういう思いで生きてきたかを市民の方々より聞き、感慨深いものがありました。その時以来、戊辰戦争関係の本は時々読み、「鯨波戦争」という私の生まれ故郷での出来事についても知りました。会津へは、いつかもう一度行ってみたいと思っています。

文系学部解体

著者:室井尚      発行所:株式会社KADOKAWA

読書年月:2017年6月

印象に残った言葉:教養教育やリベラルアーツ教育が大切だというのは、それらの一つ一つの科目が、その人が普通に考えてきた人生を生き抜くのに役に立つとか、豊かにするからではない。そうではなくて、さまざまな考え方を学ぶことで、自分がそれまで自由に考えてはいなかったこと、さまざまなイデオロギーや因襲に縛られていたということに対する「自覚」や「気づき」を与えてくれるから大切なのである。

・・・決まりきった目的に奉仕する「人材」を育成するというだけだったらそもそも大学などいらない、という記述もあります。たしかに大学は職業訓練学校とは違うはずだと思います。自分で物事を考え、判断する能力は大学生活の中で培われるものでしょう。若いうちにいろいろな価値観を知ることは大変重要な事だと思っています。物事の考え方は人それぞれ。そういうことを知るのは大事だと思います。

 

私立大学はなぜ危ういのか

著者:渡辺孝      発行所:青土社

読書年月:2017年5月

印象に残った言葉:しかし、高等教育の課題はそれだけではない。高等教育は教育の最終段階であり、それに見合う「質」の高さが当然求められる。我が国社会は大学に、より高度の人材養成を強く求めている。そのため大学には従来の伝統的な教育内容・方法を超えた学生達の「付加価値」を確実に求められるような教育が求められている。こうした意味において、現下のわが国高等教育政策の最大の課題は、大学の質をどう保証あるいは確保していくかという、いわゆる「質保証」の問題であろう。

・・・戦後の大学の質保証は「大学設置基準」と「入学者選抜試験」という二つの装置への依存度が極めて高かったということが書かれています。特に後者の重要性は欧米諸国と比べてかなり大きいということが重要。

・・・現在、ある仕事の関係でこういう内容の本を何冊か読んでいます。大学の質をどのようにして維持・向上させていくか。これが現在の課題となっています。

 

ピアノの誕生 楽器の向こうに「近代」が見える

著者:西原稔      発行所:講談社

読書年:1998年

印象に残った言葉: 忍耐と勤勉さを持ち、厳しい試練を耐え抜いた人だけが、栄光の華やかな舞台で人びとの熱い視線を浴び、人生の勝利を実感できるのだという、精神主義的な理想は、試練と忍耐は過酷であればあるほど浄化されるのだという自虐的な思想を生み出す。エチュード練習の勤勉さを近代資本主義社会における労働者の勤勉さと結びつけて解釈する人もいるが、ピアノと野球には共通になにかハングリーな精神構造があるような気がしてならない。

・・・現代はこういう意識は一般的には少し違ってきているような気もしますが、エチュードの存在意義について少々疑問を持っています。必要であることには変わりはないのですが。チェルニーの「8小節の練習曲」などを効率的に使用する方法など、研究しているところです。

・・・野球のことが書かれていますが、昔は好きだったプロ野球も最近はあまり見なくなりました。たぶんあの応援のワンパターンな感じが耐えられないのだと思う。サッカーも同じ。

・・・ピアノと共通しているのは自動車、という話も聞いたことがあります。新車を買っても最初のうちはいい走りをしない。「慣らし運転」のあとで気持ちよく動くようになる。中古市場が多い(「ピアノ売ってチョーダイ」等)。メンテナンスが重要。等々。違うのは国産と舶来の価値観くらいかも。

・・・ピアノを演奏することは楽しいことです。そう思って練習しないとつまらない。それだけは言えると思っており、コンクール受賞歴のほとんどない私は、ここに書かれているような労働者的ハングリー精神で試練を受けるといったピアノの練習については懐疑的なのです。現代はコンクールで賞をもらうためのピアノ、という文化になりすぎてはいないだろうかということもいつも考えます。もちろんあるパッセージを弾けるためにエチュード等を何度もさらうことはある。しかし、いずれ「楽しく音楽を行うために」最小限の努力をしているのであって、エチュードそのものが生きがいだとは思っていない私ではあります。ただ、仕事として演奏を行う時は「楽しく」などとは考えておりませんので悪しからず・・・

頭のきれる奴の とっさの詭弁術

著者:増原良彦      発行所:KKベストセラーズ

読書年:1986年

印象に残った言葉: ましてや誇張された表現は、誇張されただけ実がないと考えた方がよい。/その点では、いちばんよく使われる誇張表現は、「死んだ気になってやります」という奴である。碁や将棋の場合であれば、「死んだ気」というのもわからぬでもないが、人間そのものに関して「死んだ気」などと言われても、その人間は信用できるはずがない。いや、そもそも「死んだ気になる」には、どうすればなれるのだろうか。

・・・子供の頃は結構おしゃべりだったという話を親がしていますが、ピアノを習っていたため友達が少なかった中学校時代。そのためか口数が少なくなり、人前で話すのが苦手という性格になってしまいました。そして簡単に口の上手い人間に騙されるという結果に。それではいかんということでこういう本を読みだしました。これはなかなか面白い本です。阿刀田高『詭弁の話術』も面白かったのですが、こちらは論理的な解説があるのが特徴でした。

・・・「死ぬ気で頑張ります」という言葉は私も何度か聞いたことがありますが、この本にあるように結局は駄目だったということばかりのようで、言葉でこのように言ってもあまり効果はないということかもしれません。物事はやはり計画的な準備が必要。そしてこの本からはマスコミで用いられている様々な詭弁について知ることができ、勉強になりました。